「燃えよドラゴンズ!」の編曲は4種類に分類できる
曲のイントロが月光仮面の主題歌「月光仮面はだれでしょう」に似ているものが、このタイプ。
74型の譜例と
「月光仮面はだれでしょう」の譜例と
を比べると類似していることがわかる。
最後の2小節は「燃えよドラゴンズ!」のイントロのアイデンティティであって、どの編曲でもこの2小節が踏襲されている。
なお、「少年ドラゴンズの歌」のイントロ、間奏にも流用されている。
8コーラスもある曲を飽きさせずに聞かせるには編曲の技量が問われるところであるが、神保正明は、
イントロ(前奏)
1コーラス
2コーラス(楽器の重ね方を変えて、1コーラスに若干変化をつける)
3コーラス(バックが刻むリズムを変える。マーチ調)
間奏(短め)
4コーラス(1コーラスと同じ)
5コーラス(2コーラスと同じ)
6コーラス(3コーラスと同じ)
間奏(長め)
7コーラス(3コーラスと同じ)
8コーラス(3コーラスと同じ)
コーダ(後奏)
という構成で、工夫をしている。(以下、これのパターンを「1=4、2=5、3=7=8」と略記する。)
74は2コーラス目と5コーラス目のエレキギターのワウがいかにもこの時代という感じである。
7コーラス目でエレキベースの演奏ミス(鳴るべき音が鳴っていない箇所あり)が残念であるが、生オケは一発録音のものによるものであると予想される。
現代のマルチ録音であれば、簡単にオッケーテイクと差し替えで修正が可能であり、時代的背景によるものと言える。
V2は74と同じカラオケを利用している。
77は新録音。テンポも若干速くなってハツラツ感がアップ。
編曲は「村上はじめ」名義になっているが、内容的には神保正明氏の編曲の74と傾向は同じである。フルート(もしくはピッコロ)やシンセサイザー
の追加により新鮮なイメージとなっている。譜割りの変更やメロディーの音程も変更されている箇所がある。
なお、各コーラスの変化は、基本は「1=4、2=5、3=7=8」で74型を踏襲しているが、7コーラス目はドラムスだけが1、2コーラス目と
同じで、厳密には「1=4、2=5、3=8≒7」と判断できる。
79も新録音。77同様、74よりテンポが速くなっている他、ブラスの合いの手もマイナーチェンジされた。
さらに、キーがそれまでのロ短調(B minor)からイ短調(A minor)に変更されて全音低くなっている。
ボーカルの山本正之は、低い音がちょっと苦しそうである。
なお、各コーラスの変化は「1=4、2=5、3=7=8」で74型を踏襲している。
82は74の新録音という感じだが、編曲の細部はリファインされていている。特筆すべきは79に続いてキーが変更になっていること。82のキーは変ロ短調(Bb minor)で、74より半音低くなっている。
なお、各コーラスの変化はやはり「1=4、2=5、3=7=8」で74型を踏襲。
月光仮面の版権問題とも関連していると思われるが、新しい編曲でイメージチェンジ(歌の部分のコード進行も部分的に変更されている)となった。
イントロ譜例から、3連符が錯綜する凝ったイントロであることがわかるが、これを見事にこなした演奏になっている(特にトランペット)。
2小節のファンファーレに続く4小節は、74の5小節目からの4小節に対応し、最後の2小節が言わずと知れた「燃えよドラゴンズ!」だが、その前の2小節も74のものの変形になっていて、
基本骨格は74を踏襲していることがわかる。また、各コーラスの変化も「1=4、2=5.3=7=8」で74型と同様である(87は8コーラス目にバックコーラスがフルにかぶるので、正確には「3=7≒8」ともいえる)。
87は、たいらいさおのボーカルが実に爽やかだが、後期バージョン(87B)だとなぜかちょっと音程が怪しくなる部分があるのが残念である。
87のカラオケはその後、最大限流用されていて、H5まで同じある。レコード会社の都合もあろうが、編曲自体の出来が良くて変更する必要がなかったという部分もあるのかもしれない。
神保雅彰的にも快心のアレンジだったのか、現在のところ神保雅彰氏最後の編曲である02は、87の新録音という感じである。82が74のお色直しになっているのと、ちょうど同じような関係である。
最も新しい神保アレンジの02だが、バックの演奏、特にベースとドラムが抜群である。ボーカルが水木一郎ということもあってか、キーは「燃えよドラゴンズ!」史上最も高いハ短調(C minor)である。
なお、イントロのトランペットのメロディーは、87から若干の変更がある。また、各コーラスの変化は「1=4、2=5=7、3=6=8」で98の路線を踏襲。
インディレーベルでのリリースだからなのか、神保正明編曲による生オーケストラのバックではなく、山本正之本人の編曲で、演奏もシンセの打ち込み。
事実上、初めて神保正明以外の手による編曲となったバージョンである。
譜例は他との比較がしやすいように、74、87とキーが同じである00のものを示す。シンセの打ち込みながら、これまでの路線とかけ離れることはなく、ブラス音色を多用して「燃えよドラゴンズ!」らしさが演出されている。
各コーラスの変化は「1=4、2=5=7、3=6=8」で、74型、87型から若干変更されている。
98はキーが変ロ短調で、79より半音高くなっていまる。また、99は神保雅彰編曲だが、98のアレンジの特徴を最大限取り込みながら、「神保カラー」を加えたもので、イントロは神保カラーの4小節に98版の3小節目以降がつながる形。
生オーケストラのバックの特徴を強調する編曲、演奏で、前述の02と同様、ベースとドラムのキレが特筆ものである。
なお、キーは変イ短調で、79よりさらに半音低くなっていて、02と対照的に史上最も低いバージョン。そのせいか、舟木一夫カラーなのか、ほかのバージョンに比べて落ち着いた味わいになっている。
各コーラスの変化は「1=4、2=5=7、3=6=8」で98の路線を踏襲。
00は基本的に98を踏襲しながら、リズム楽器やベースが強調されたアレンジになっている(低音が増強されているのは、低音が軽かった98の反動?)。
キーは半音上がって、「燃えよドラゴンズ!」の定番ロ短調。
98と同様、インディレーベルのリリースのせいか、バックがシンセの打ち込みに逆戻り。
キーは02と同様ハ短調で、
イントロ譜例は、比較しやすいようにロ短調に移調している。
最後の4小節でしっかり「燃えよドラゴンズ!」を主張している。
98と同様打ち込みで、ブラス音色を多用しているが、04ではホルン系の音色が加わっているのが新機軸。ティンパニの音色も加わってスケール感がアップして
いる。
なお、各コーラスの変化も「1=4、2=5=7、3=6=8」で98の路線を踏襲しているが、1コーラス目と2コーラス目とのオーケストレーションはほとんど差がない。